介護の現場では、認知症の方と接する機会が多くあります。
しかし認知症といってもその症状はひとりひとり違いますし、それぞれにとって適切な対応が分からず、苦手意識をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
認知症の方の気持ちを理解し、ひとりひとりに合った最適な介護を行うためにはどうしたらいいのか、注意点や必要な心構えをまとめてみたので参考にしてみてください。
認知症患者の方をケアするときに最も大切なのは、その人の作り上げている世界を理解し、それに合わせた対応をしていくことです。
認知症になるとさまざまな症状が現れますが、ひとつひとつの行動はちゃんと理由があって起こっていることです。
そのため、行動の意味を考えていくことが第一歩となります。
相手を理解するには「人」として相手と向き合わなければなりません。
「認知症患者」という見方をしながらコミュニケーションをしていては、いつまで経っても相手の信頼を得ることはできません。
それどころか相手は傷つき、不安を煽られ、孤独感を強めていくかもしれません。
その結果、認知症は進行し、妄想や徘徊といった問題行動が増えることさえあるのです。
信頼関係を上手く築き、適切なケアによってその方が穏やかに過ごせるような環境を作ることができれば、逆に認知症の症状は落ち着いてくることでしょう。
認知症になったからといって人としてのプライドを失っている訳ではありませんし、感情もしっかり残っています。
そのためむやみに失敗を責めたり、否定して自尊心を傷つけたりしないよう、敬意を持って接することが大切です。
まずは視線を合わせ、相手の名前を呼ぶことから始めましょう。
それだけでも、気持ちは伝わりやすくなるはずです。
また、自分でできることは自分で行ってもらい、感謝の気持ちを伝えるようにすると、それは本人の自信につながりますし、活力にもなるでしょう。
本人の主張をありのままに受け入れる姿勢を持つことも大切です。
現実の世界とは違った主張をされた場合でも、それがどのような気持ちから発せられた主張であるかを推し量り、感情に共感しながら本人が安心できるような声かけを行ってください。
たとえば「帰りたい」と主張する方に対して「座っていてください」などと現実の世界を押し付けても、本人は反発するだけです。
興味を持って話に耳を傾け「会いたいですね」「心配ですね」と言ってあげられるような、本人に寄り添う接し方が求められます。
規則正しい生活を送るための環境作りをサポートすることも大事です。
栄養バランスのとれた食事や、散歩などの軽い運動、夜間の気持ちの良い眠りなどが保たれるよう、環境を整えてあげましょう。
介護者の接し方は、認知症の人にとってはその症状に大きく影響する重要な要素です。
毎日を穏やかに安心して過ごしてもらえるよう、笑顔でコミュニケーションをとり、信頼関係を築いていきましょう。